オーディオケーブルマニュアル
オーディオケーブルを正しく使いこなすために
オーディオシステムの接続ケーブルは、かつては一部の専門家を除いて、ほとんど省みられませんでした。
注目されはじめたのは、ケーブルで音質が変わることが知られるようになってから、現在では、ケーブルについて関心がこれまでにないほど高まっています。

セットメーカーやケーブルメーカーから数多くのケーブルが売り出され、オーディオ誌には毎月必ず関係記事や広告が見受けられます。こうした状況の中でオーディオファンは、ケーブルを取替えたり、聞き比べたり、それぞれ、自分なりに何らかの形で気を遣っているのではないでしょうか。
しかしさまざまな情報が錯綜して、どれが正しいのか、どれを取り入れたらいいのか、ちょっとわかりにくいと思います。 ケーブルを取替えたりする前に、まず正しい情報を確保するのが先決です。

「オーディオケーブルマニュアル」では、ケーブルの材質、構造と音質の基礎的な関わりを紹介しています。
このマニュアルがケーブル選択の入り口としてオーディオァンの皆様にお役に立てれば幸いです。
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ケーブルの音質は導体だけでは決まらない
オーディシステムに使われるケーブルには、次の3種類があります。
(1)電源供給の電源ケーブル
(2)微弱信号を伝送するオーディオケーブル
(3)スピーカーを駆動するスピーカーケーブル

それぞれのケーブルが、それぞれの役割を負っていますが、次の3つの要素が複雑に絡み合って音質を決めています。
(1)導体の材質
(2)絶縁体の材質
(3)ケーブルの構造

これらが音質のどのような点に現れてくるかというと、おおむね導体材質による改善は主として、分解能に、音色に関するものは絶縁体とケーブルの構造が支配的です。
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導体の種類
TPC(tough pitch copper)タフピッチ銅
普通、電線用に使われる電気用軟銅線は、ほとんどタフピッチ銅です。電気分解された電気銅はいったん溶解して、電線をつくるために好ましい形状に冷却、線引きを繰り返し、電線用導体となります。タフピッチ銅は大気中で溶解、冷却が行われるために、酸素を300〜500ppm程度含みます。

OFC(oxyacid free copper)無酸素銅
酸素を遮断して製造された銅で酸素含有量は極めて少なく(10ppm以下)、導電率はタフピッチ銅に比べて0.5〜2%程度高くなっています。

PCOCC(Pure Copper by Ohno Continuous Casting process )
一方向性結晶無酸素銅

千葉工業大学、大野教授考案による加熱鋳型式連続鋳造=OCC法で製造された画期的な導体材質。鋳型を加熱して鋳造されるため単結晶状の銅線を得ることができます。高純度無酸素銅を使用しているために不純物が極めて少なく、また実用上用いられる長さでの結晶粒数は1個、即ち信号伝送方向を横切るような粒界は存在しないため、極めて低歪率で信号伝送ロスが少ない特徴をもっています。 zu_001
OFCは高純度化が進み、現在では純度99.99999%(Nineが7つあるので7Nといわれます)のものまで現れています。しかし、TPCからOFCへ移行が不純物である酸素の除去を主としたのに対し、この純度追及では酸素や水素のガス不純物を純度のカウントに加えていない点が異なります。導体材質の改善の流れは、巨大結晶化と高純度化です。つまり、7N-PCOCCの銅線が安価にできれば最高ということになります。
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導体の構造による違い
ケーブルには、その用途により導体に単線を使用する場合と撚線使用する場合があります。
撚線には次の3種の撚り方があり、それぞれ特徴があります。

1.集合撚線
撚線の素線すべてを一緒に同方向に撚る方法で、電源ケーブルや安価なスピーカーシステムに付属した平行2心ケーブルの多くは集合撚線です。この方法では撚線導体の断面はきれいな円形とならず、このような線を信号伝送に使うと、ケーブルの特性
インピーダンス等が電線の長手方向に対して変動するので、信号の反射等が起こり、音質劣化の原因になります。
※電源コードでは安全規格で柔軟性の必要性から集合撚線を使用することを指定していますので、これを使用せざるを得ません。

2.同心撚線

撚線導体は複数の層で構成され、各層の外接円の中心が導体の中心と一致するように撚たものです。素線本数が多く幾層にもなる場合には、隣り合う層を逆方向に撚るのが普通です。外力による導体のつぶれも少なく、信号導体に適しています。また、導体の位置関係が長手方向に均一なので、特性インピーダンスを安定させることができます。

3.ロープ撚線
通常、集合撚りしたユニット又は同心撚りしたユニッをさらに同心撚りした構造で、多くの素線を撚り合せたい場合に用いる撚線構造です。特に可撓性の要求のある産業ロボット用やスピーカー用ケーブルに使用されます。
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導体のさまざまな特性
導体抵抗
導体抵抗の大小は信号の減衰量と直接関係するため、ケーブルの選択時には充分考慮する必要があります。とくにスピーカーケーブルでは導体抵抗が大きいと、ダンピングファクターを低下させる原因となります。直流導体抵抗は、使用する導体材料の導電率と断面積によって決まります。交流(とくに高周波)が流れる場合には表皮効果、近接効果、渦電流損等によって導体抵抗(交流導体抵抗)は上昇します。
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表皮効果
導体を流れる電流は周波数が上がるにつれて導体の表面に集まろうとする性質があます。これは高周波の電磁波は金属中に深くはいり込めない為とか、導体内部の電流の反作用と説明されています。電流が導体表面に集まって導体の中心部に電流が流れないと、結果として導体の有効断面積が小さくなって導体抵抗が増加し、減衰量が大となり、音質劣化を引き起こすことになります。表皮効果を減少させるために考え出されたのがリッツ線で、撚線の各素線を絶縁(通常ポリウレタン焼付)して導体の表面積を大きくしています。又、撚線導体の中心に絶縁物を配した「CENTRAL FILLER構造」も効果があります。

近接効果
導体が隣り合って置かれ、それぞれに高周波電流が流れていると、電流の方向が同一の場合には互いに電流は離れて、電流の方向が逆の場合には互いに近づいて流れる性質があります。このように電流の流れが不均一になると導体抵抗は大きくなります。
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絶縁材の種類
従来、電子機器用電線、ケーブル用にはPVC(ポリ塩化ビニール)が多く使用されてきました。ところが、世界的な環境問題の動き、法規制に呼応して、電線、ケーブル用材料のハロゲンフリー化が進められています。ハロゲンフリー材料としてはPE(ポリエチレン)やPP(ポリプロピレン)に非ハロゲン系難燃剤を加えたものが実用化されてきています。現状ではハロゲンフリー材料は従来の柔軟性PVCに比べると、若干硬く、傷つき易い等の欠点がありますが、下記のようにリサイクル、廃棄面で大きな差がありますのでハロゲンフリー化は避けられない動きです。

リサイクル利用 ハロゲンフリー電線 PVC電線
マテリアルリサイクル ・可能
・PE,PP樹脂等のオレフィンと混ざっても
 混合利用可能
・単独では可能
・PP樹脂等のオレフィンと混ざった場合、
 分別処理が必要であるが、品位の低下が
 免れられない
サーマルリサイクル
ケミカルリサイクル
・可能 一般的には不可能
(一部可能な技術も実用化検討中)
分別除去や脱塩素処理が必要
廃棄処理 ・焼却処理が可能
・たとえ埋め立てても無害で安全
・焼却処理は塩素ガスが設備に負荷を与える
・埋め立て処理においても擬似環境ホルモンの
 溶出が心配
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絶縁材の電気的特性
絶縁材には、ケーブルを設計する上で重要な4つの電気的特性があります。体積固有抵抗は直流に対して単位体積当たり抵抗で絶縁性能をしましています。絶縁耐力は1mm厚の材料に電圧を加えていったとき絶縁破壊する電圧です。信号伝送用ケーブルにとっては比誘電率と誘電正接が重要です。これらは特に高周波の交流信号が絶縁体を伝わる際の特性インピーダンスや損失量を決定します。

比誘電率
ケーブルの設計において、比誘電率は最も重要な特性です。比誘電率は、例えば並行板コンデンサにおいて真空の場合の静電容量をCoとし、絶縁物をはさんだときの静電容量をCとすると、その比で定義されます。
          
    Es=(C/Co)

別の言い方をすれば、真空(Es=I)に対してどの程度の分極が発生するか、その大小ということができます。
絶縁材料によっては(例えばPVC)比誘電率が周波数によって変動したり、また比誘電率の大小は信号の伝わる速さに影響するので、値が大きく、周波数によって変動のある材料を使用するのは好ましくありません。

静電容量
ケーブルの静電容量は2つの導体の位置と絶縁体の比誘電率によって決まります。低容量ケーブルに発泡ポリエチレン等が使われるのは、発泡により比誘電率を小さくすることが可能で、かつ周波数特性を安定させることが出来、またさらには外径を小さくすることもできるからです。音声周波数程度では導体抵抗とともに静電容量の大小が減衰量を決めることになります。また、構造や使用する材料によって静電容量は周波数によって大きく変動することがあります。
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特性インピーダンス
デジタル信号やビデオ信号のような高周波の伝送には、機器とケーブルの特性インピーダンスをマッチングさせる必要があります。マッチングしていなければ、接続点において信号の一部に反射が起こるため、結果的にきれいに信号が伝わらなくなります。パルスでは立ち上がりや立下りの波形に、なまりが生じたり、波形がゆらいだりします。このためエラーが発生、音質劣化の原因となります。
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シールド
外界のノイズからケーブルを伝わる信号を保護するために、ケーブルはシールドが施されます。シールドには電界に対するものと磁界に対するものと2種類あります。電界に対しは導電率の良い金属体、例えば銅線やアルミニュウム箔等を施すことによって、必要なシールド効果を得ることができます。シールド効果は、シールド部分の抵抗値に反比例するので、より良好なシールド効果を得たい時にはシールド部の抵抗を低くする必要があります。また磁界に対しては、鉄等の磁性体をケーブルの上に施す必要がありますが、ケーブルが太く、硬くなるためにオーディオ用ケーブルは、ほとんどこのような構造のものはありません。一般にケーブル線心を撚合わせると、磁界に対して打消効果も期待でき漏話の低減に役立ちます。ケーブルの技術者はこれを磁気シールドとは言いません。

電源ケーブルやスピーカーケーブルのような低周波域に使用されるケーブルにAL箔のような薄いシールドを施しても、シールド部分の抵抗値は大きく、又、導体を伝わる信号が作る電磁界によって、シールド部分に発生する渦電流が信号を伝送する導体に影響を与え、同時に静電容量も増加することから、減衰量が増大するため、音質に悪影響を与える可能性もあります。シールドという言葉の安心感だけでシールドを施すのは逆効果となることがあることを知っておきましょう。
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ケーブルの使い分け
平衡型と不平衡型のケーブル
オーディオケーブルは、構造と結線方法によって平衡(バランス)型と不平衡(アンバランス)型に分類できます。平衡型は往復線路を構成する導体がほぼ等しい構造をしており、電気的にも大地(接続電位)に対して等しい関係にあるものです。不平衡型は往復する2線が構造および電気的に同一条件になく、同軸ケーブルがその代表的なものです。
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信号にも平衡型と不平衡型
ケーブル同様オーディオ機器で取り扱われる種々の信号も平衡型と不平衡型に分けられます。カートリッジやマイクロフホン等のコイルや圧電素子に発生する電圧は電磁気学的には歪波交流と称される平衡型信号です。またCD等で利用されるパルス信号は、本来接地電位(OV)を基準に信号伝送するので不平衡型信号といえます。
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信号とケーブルのタイプをマッチング
そこで信号を効率よく伝送するには、信号のタイプとケーブルのタイプを合わせるのがベーターであることはいうまでもありません。アナログ信号には平衡型ケーブル、デジタル信号には不平衡型ケーブルが好ましい訳です。しかし、アナログ信号に使用されるオーディオケーブルの実情を見ると、同軸ケーブルが主流ですが、これはRCAピンジャックの同軸構造に由来していると思われます。この様にアナログ信号とデジタル信号とではケーブルを使い分けると減推量を小さく出来効果的です。また、デジタル信号及びビデオ信号の高周波用には特性インピーダンスを75Ωに合わせた同軸ケーブルが必要です。
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ケーブルの選び方「チェックリスト」
いま使用しているケーブル、あるいはこれから採り入れてみようとしているケーブルがありましたら、次の項目にしたがってチェックしてみて下さい。

[ 1 ] 導体材質
導体材質は主として分解能を左右しますので素材の純度、結晶粒の大きさ、硬さも音質傾向をみる判断材料です。

[ 2 ] 導体構成
導体が撚線の場合、断面がきれいに円形になっているかどうかを、よく見なければなりません。
集合撚りはあまり円形ではなく、同心撚りはきれいな同心円状ですから見分けやすいでしょう。

[ 3 ] 絶縁材質
絶縁体の材質によっては周波数特性に変動するものがありますので注意が必要です。高周波用ケーブルでは比誘電率の大小で伝わる信号の早さが決まってきますから、使用されている絶縁材の比誘電率が小さく、周波数的に安定しているかどうかを確かめる必要があります。

[ 4 ] シース
シースの硬さはケーブル全体の硬さを決める要素の中では役割が大きいといえます。柔軟なケーブルは使い勝手(配線性)が良いという利点がありますが、使い勝手とが良いことはそのまま音を良くすることと必ずしも一致しません。柔軟性と音質は別問題と考えるべきでしょう。環境問題から「絶縁材の種類」の項目で述べたとおり、今後はPVCに替わってハロゲンフリー材料が広く採用されるでしょう。
又、シースで厚着をするのは減衰量の増加につながることもあり、注意が必要です。
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リスニングルームでのケーブルの取り扱い方
どんなに音質を考慮したケーブルであっても、取り扱い方を誤ると、その優れた特性を発揮できなくなります。
次のような点についてチェックしてみましょう。
● 巻いたり、束ねたり、結んだりしない。
● 必要以上に長くしない。
● 極端に曲げない。
● 電源ケーブルと離して配線する。
● 鉄製の機材などに近づけない。
●片端をオープンにしない。
● 不要なケーブルは取り外す。
●安易にケーブルをジョイントしない。
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さらに充実したオーディオライフを
オーディオの接続ケーブルは、信号を伝送するために何と複雑な要素が絡み合っていることでしょうか。きっと驚かれたことと思います。ケーブルによって音質は変わりますが、その音があなたの求めていたものかどうか、それを探す自由度がさらに増えたことは間違いないでしょう。どうぞケーブルは慎重にお選びになって、より充実したオーディオライフをお楽しみください。

ケーブルは感動を伝えます。
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